第29回木村伊兵衛賞

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神戸の澤田知子さんが授賞されたようですね。澤田さんは、セルフポートレートをその表現手段の中心としている方なのですが、自らシャッターを押すことも無いし、シンディーシャーマンのように思わせぶりな境地に自らを配するわけではありません。彼女の初期の作品は単純に近所のスーパーにあるような証明写真機で撮影したものです。といっても単にとるのではなく、幾度も衣装や髪型やメイクを変え撮影されたシリーズです。その後も、同じように髪型や着物を着替えて撮られるオーソドックスなお見合い写真であったり、いわゆるガングロメイクを施して撮影したり、様々な職業の衣装を着て日常的なスナップ写真のようなものであったりと、被写体自身は厳密な意味での澤田知子その人であるわけですが、そこに立ち表れるイメージは様々に変化していくのです。
自己を変容させ視覚的イメージである写真というメディアを通じて社会の中に拡散させていく澤田さんの作品はポートレイトを考える上でも、ジェンダーについて、自己という問題について考える上でも示唆に富んでいると思います。