真珠の耳飾りのヨハンソン

真珠の耳飾りの少女 通常版 [DVD]

真珠の耳飾りの少女 通常版 [DVD]


先日の一回生ゼミで発表者が取り上げた作品。映像が綺麗だったので発表後DVDをお借りする。ヨハネス・フェルメールの作品≪青いターバンの少女≫を題材とした作品で、フェルメールコリン・ファースが、絵のモデルとなる少女をスカーレット・ヨハンソン*1が演じている。劇中の調度品はどれも手が込んでいて、≪The Concert*2≫という作品に見られる、天板に風景が描かれたピアノもちゃんと登場する。しかし、何といってもこの映画の魅力はカメラと絵画の関係だろう。周知の通り、フェルメールはカメラオブスキュラを使用し絵画を制作しているし、劇中にも登場する。それゆえしかるべき箇所にカメラを配置すれば絵画と同じ像を作ることは容易に可能であると思われるかもしれないが、そう単純ではないようだ。写真家の杉本博司が≪Music-Lesson*3≫を写真によって再現することを試みている。実際に机等の調度品を、絵画に照らし合わせ配置し、然るべき箇所にカメラを設置し撮影するというものだ。しかし、実際に配置してみると椅子と女性の間にビオラを置くスペースは無く、そこにビオラが位置するのは物理的に不可能だったそうだ。フェルメールの絵画は単純に機械的に写したものでははないのだ。この映画でも、絵画を模した画面構成を試みるシーンはいくつかある。時間があればもう一度見て仔細に検討してみたいが、おそらくCGを使うなりして対応させているのだろうか。そしてカメラに関してもう一つのこの映画の特徴は、極めて「なめ撮り」が多い。登場人物の手前に何かを配置し、被写界深度を浅く設定し前景をぼやかして撮影するという手法が不自然なまでに多いのだ。それは恐らく、実際にはそんなに広くは無いであろう、フェルメールの邸宅を効果的に見せる為に選ばれた撮影方法なのだと思う。被写界深度を深くしてしまうと空間の狭さが目立ち、様々な品々に溢れた室内のシーンでは情報量が多くなってしまうのだ。被写界深度を浅く設定することで空間的な広がりを持つことが出来るのである。

*1:それにしてもスカーレット・ヨハンソンは美しい。

*2:http://www.ibiblio.org/wm/paint/auth/vermeer/i/concert.jpg

*3:http://www.ibiblio.org/wm/paint/auth/vermeer/i/music-lesson.jpg