LOVERS再び

こないだ書いたlovers話に関して、id:scissorhand:20040930さんより、以下のようなリファを頂きました。

歯が浮くほど甘ったるいラブストーリーだと私は解釈しましたが、いかがでしょうか、id:Arataくん。

確かにそう感じたといえば感じたのですが、飛刀門の頭を演じるはずだったアニタ・ムイの急死*1により、大幅なカットがあったという前情報を得ていたので、そう強く感じることは無かったです。大幅にカットされたシークエンスとはあまりに不自然ゆえにわかると思いますが、飛刀門VS朝廷のそれです。この大きな対立を完全に消し去ることによって、物語は件の三人による小さな対立に終始してしまう、あるいは集中することになったのです。それゆえ甘ったるいラブストーリーになってしまったのでしょう。もしとか仮にとかと切り出す話は不毛ですが、代役を立てるなりして、飛刀門VS朝廷のシークエンスも描いていたのであれば、二つの対立によりもう少しストーリーに厚みが出たのではないでしょうか。当然飛刀門は朝廷に敗北するわけですし、三角関係もああいう終わり方をするのですから、単純な恋物語ではない、儚さというようなものを、牡丹(坊)という春から雪降る冬という全体の季節感、あるいは色彩と相まって重層的に描き出せたのではないかと思うのです。イーモウはそうしようと考えていたのではないかと。もちろん代役を立てるという選択肢もあったのでしょうが、そうしなかった。そこにこの作品がアニタ・ムイに捧げられた理由があるのかもしれません。そう考えた、というか夢想していたので、甘ったるいラブストーリーというだけではなかったですね。
「映像は奇麗だけどストーリーはいまいち」という点に関してですが、つっこみどころが満載というのは僕も書いたように感じています。が、ストーリーはいまいちということを殊更強調するほどの映画ではないなっと。確かにカットされたシークエンスは残念ですし、出来ることなら完全版を是非見てみたいとも思いますが。

*1:ちょっとだけ出た頭目はそこらへんの暇そうな俳優を引っ張ってきたらしいです。