トーマス・シュトルート

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シュトゥルートは1954年ドイツ・ゲルデルン生まれ。デュッセルドルフ美術アカデミーでゲハルト・リヒターに師事して絵画を専攻します。その後、写真を用いた制作へと転向しています。写真では溶鉱炉や給水塔などの写真で有名なベッヒャー夫婦に師事します。


ベッヒャー夫婦の産業建築物をサンプルのように撮影して並ベて見せる写真は “タイポロジー(類型学)”と呼ばれ、コンセプチュアル・アートおよび ミニマル・アートとして主に現代アートの分野で評価されています。現在ではベッヒャー派の有力写真家として知られているシュトゥルートの写真も 80年代以降の写真の新しい流れの担い手として、現代アートの文脈で評価されています。


シュトゥルートの作品はいくつかのシリーズで発表されています。初期の70年代から80年代半までの主にモノクロで欧米や日本の街の風景を大型カメラで制作した“街路”シリーズ。80年代半ばから開始された、“肖像”シリーズ、80年代後半から開始された有名な“美術館”シリーズ などです。そして90年代には自然が中心題材に取り上げられ、ヨーロッパの田園風景、花から派生して屋久島の自然などを撮影した“パラダイス” シリーズへと発展しています。2000年10月には東京国立近代美術館で初期から最新作までの仕事を約50点の代表作品が紹介される写真展が開催されました。


モチーフの作品は風景、肖像、自然、街路など特別なものではありません。彼は美しい写真、魅惑的な写真、そして世界状況が反映された個人の心理を表した作品作りを心がけているそうです。
有名な美術館シリーズでは何百年も年月を経ている名画の構図とそれを感情で捉えて観賞している観客の配置とを一緒に作品に取り込むことで古い絵画が現在に生きるようになると語っています。
彼は撮影のプロセスから出来るだけ自分の主観を取り除き、写真側から現れてくるものを発見して 見極めようとしているのです。これはベッヒャー派作家に見られる共通の作品へのアプローチです。