ジャコメッティ

ジャコメッティ展(於:兵庫県立美術館)へ。同じブロンズを使っているブランクーシと比べてみれば顕著であるように、ジャコメッティの彫像は、その表面の起伏が極めて表情豊かであり、それが彫像のモデルである人物の表情と反響している。彫刻というのは、潜在的に触覚的なもので、彫刻を観賞するときは、眼で触る、といった感覚が常に付きまとってくるのだけれども、ジャコメッティはそれが特に顕著。
一方で、ジャコメッティの彫像は非常に細い。ただし、男性がモデルの場合は、肩が極端に張り出しており、胴体そのものが台座であるかのように、どっしりとしているものが多かった。もちろんそうでない男性像もジャコメッティの作品には多いのだけれども、逆にどっしりとした女性の彫像はあまりないように管見の限り思われる。その細さを、眼で触る。折れそうなほど細くなった像に触れる繊細さ。そのギリギリの危うく繊細な感覚が僕にとって、ジャコメッティの魅力の一つ。例えば≪鼻≫とか。
今回の展示では、彫像作品のみならず、タブローも多数展示されていたのだけれど、気になったのは、キャンバスそのものの中に四角くフレームが描かれていること。回←こんな感じ。細かく筆線を見ていくと、どうやら、ジャコメッティは最初にフレームを描いてから、それを基準に描いていったようだ。おそらく窓のようにキャンバスの外部へと世界が広がっていくのではなく、あくまでも世界はそのフレーム内部のみである、というのがジャコメッティの認識だったのではないだろうか。ここらへんはまだ良くわからない。