ART RULES KYOTO 2008

5月3日、京都国立近代美術館にART RULESのライブ・パフォーマンスを見に行ってきた。今回のART RULESのイベントはChick on speedが、世界の美術館を回るツアーの一環としてライブを行うもの。中心となるChicks On Speedの他にOOIOO中川佳代子、振り付けは伊藤千枝(珍しいキノコ舞踊団)が参加している。東京、愛知で断られ、京都での開催に至ったらしい。前売りは購入できず当日券を求めて発売の一時間前に美術館に到着するも、すでに購入者の列が出来ていた。その時点で当日分のチケットの購入は不可能なことを告げられ、結局会場には入れなかった。しかたなく併設されたモニターでライブ中継を観賞することに。音は会場から、パフォーマンスは映像でと微妙にズレた観賞形態。
イベントは、浴衣を着たメンバー達がのっけから観客をステージに引張り上げて踊りまくりでスタート。Chicks On Speedのライヴといった様相で映像とノイズとパフォーマンスが進行し、髪を切りあったりレコードでお尻をしばいたり最後は全裸でライブ・ペインティングでグチャグチャに。インクをまき散らしながら、壁には"ART?"という文字とでっかい丸、体に絵具をぬって人間拓本。その意味では公開制作とも言えるイベントだった。合間にはフェミニズム・アートやパフォーマンス・アートに関するレクチャーが挟まれる。また、最後のパフォーマンスに入る前に、イベントのチラシにも刷られた、"ART"批判めいた文言が朗読されていた(ココで確認できる)。
今回のイベントで面白かったのは、彼女たちの"ART"批判的なパフォーマンスが、かつての反芸術的な運動のパロディーに見えてしまうところ。レクチャー・パフォーマンスでは、引用元があからさまに提示されていたりもする。またフルクサスとかイブ・クラインとかのパフォーマンスが常に映像とその残骸でしか確認できず、その二つの意味での痕跡が作品として流通し保管される。今回のパフォーマンスでもハンディカムでの撮影とその映像のスクリーンへの投影が同時に行われていたし、また作品として行為の痕跡が残る。美術館で行うことによって、そういった事態を自己言及的に提示しているのだろう。
ちなみに、下の写真は閉幕後、会場に入れてもらって撮影したステージ上のパフォーマンスの残骸。

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写真には写ってないけど、イブ・クラインの女拓の模倣もあった。またそこまで意識していたのかはわからないけど、普段スクリーンの向こうの壁にはリチャード・ロングの巨大な円のペインティング――泥を手を使って直接キャンバスになすりつけたもの――が展示されているはずで、日の丸のような円はそれを意識しているのかも。あるいは吉原治良か。髪を切るのはオノ・ヨーコのカッティング・ピースを思わせるし、インクをぶちまけるのはポロック。お尻をレコードで叩いてレコードを割るのは何だろう。等々。
その意味では今回のイベントは"ART"批判が"ART"批判足りえないということの滑稽さを提示するイベントだったように思う。それゆえ、単にパフォーマンスの「過激さ」に酔ってしまうのでもなく、あるいは真面目に観賞するのでもなく、むしろその滑稽さを笑うことが重要なんだろう。ただ素直に笑えないのは"ART"を声高に叫ぶにしても、あるいは"ART"批判が"ART"批判足りえないということの滑稽さを示すにしても、結局はどちらも"ART"という枠組みには依然としてこだわっているわけで、そこを引き受けられなかったからかな。その後、会場に入れなかった物足りなさに任せて、テイ・トウワ&卓球のイベント@ワールドになだれ込む。。。