replace

マイミクのRachiさんがキュレーションした展覧会です。
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  • 展覧会名:replace
  • 展覧会期:2008年3月31日(月) ― 2008年4月8日(火)(水曜日は休廊)
  • 展覧会場:gallery 176 (大阪府豊中市服部元町1−6−1)
  • 開催時間:午後12時より6時(最終日は5時まで)
  • 出品作家:川村麻純、新田祐也
  • ギャラリートーク:4月6日(日)14:00〜:川村麻純 x 新田祐也 x 良知暁

本展『replace』は、“書くこと”“読むこと”という物語の意味を作り出す行為の不安定な揺らぎというテーマのもと、 国内外で作品を発表してきた若手作家、川村麻純の3冊の本と写真によるミクストメディア作品"zwischenraum"、新田祐也のプロジェクター投影による映像作品"quiet story"を紹介します。

ドイツ語によって書かれた物語が別の2カ国語へと翻訳される。"zwischenraum"において川村はその写真群を壁や額ではなく、3冊の本の間に忍び込ませる。
本の中に見つけることになる小さな写真は、 挿絵のように物語に関係しているようでありながら、栞のように物語に無関係のようでもある。別の作家によって書かれた物語(ここではユーディット・ヘルマンによる「夏の家、その後」)を誤読させるかのようにその写真群は本の中に潜み、それと同時に独自の物語を形成する。同時に、"zwischenraum"の写真群もまた書かれている物語によって誤読されるだろう。
"zwischenraum"は何かと何かの間で誤読によって複数化する物語を肯定する。

新田は"quiet story"で真っ白な紙の上で走り続けるペンの動きを映像化する。その視点は決して書き手が目にすることのない視点であり、同時に読み手が、白い紙の上に確かに染み込んでいるはずの筆跡を辿ることをも不可能にする特別な視点である。書かれていることを理解したいという願望はその手の動きからなんらかの意味を読み取ろうとするが、それはいつのまにか、ペンと紙が触れ、離れ、時にインクが糸を引くといった動きそれ自体、またその動きのたてる音に対する興味へと移っていく。書かれている意味への興味と書かれている意味への無関心との間を揺れ動く中で、白い紙の中には見ることのできない物語が綴られていく。

川村の"zwischenraum"は本の内側から“読むという行為”を通して生まれる誤読へ、新田の"quiet story"は日常的な“書くという行為”からノートの真っ白な世界へ、内側から外側へ、外側から内側へと想像力を媒体にして、物語の意味を探っていく。2人の作品が行き来する内側と外側の間にあるものが物語の意味なのかもしれないが、その境界線は行き来するたびにずれ、複数化したり、消えていったりする。『replace』は複数の物語が生まれ、消えていく空間であり、その空間の体験である。