360度

テオ・アンゲロプロス監督、「旅芸人の記録」を見る。四時間弱の大作。演劇を上演し各地を巡業する旅芸人一座の1939〜1952年を描き、そこにギリシャという国の苦渋の歴史を挟み込み、叙事詩を織り上げていく。ギリシャ現代史、ないしは神話の基礎知識が無いとつらいが、DVDについていた解説がそれを補ってくれたので助かった。
この映画では、先日見た「霧の中の風景」*1と同様に長回しが多用されているのだけれども、圧巻なのは360度パン。ゆっくりとしたカメラの動きは、尋常でない緊張感を生み出している。カメラの向かう先に何があるのか、何がおこるのかと、見るものは緊張感とともに画面を凝視する。360度パンは時には歴史的な時間をつないでいく。歴史的な時間がワンシーンで描かれる。アンゲロプスにとって歴史とは、出来事(ショット)の積み重なりではなく、持続なのだ。

アンゲロプロス―沈黙のパルチザン

アンゲロプロス―沈黙のパルチザン


↑図書館のメディアライブラリーにあるアンゲロプス作品を一通り見たら読んでみよう。

*1:この映画に、「旅芸人の記録」の旅芸人たちが同じ役者で登場している。