チャイナドリーム

兵庫県立美術館にて開催中の展覧会、チャイナドリームを見てきました。

中国の現代アートや、清朝以前の美術がクローズアップされている一方で、この展覧会はいわゆる近代中国における視覚文化、大衆芸術がフィーチャーされています。その中には19世紀前半に盛んに制作されたチャイナ・トレード・ペインティングという西洋人の為の輸出用絵画や、それに取って代わるようなお土産写真、そしてそれらの系譜の延長線上に現れてくる商業ポスターや政治的プロパガンダポスター等が含まれていました。
チャイナ・トレード・ペインティングが個人的には一番興味深かったです。色の使い方、構図等には、中国の伝統と、西洋からの新たな技法がまさに混沌としており、個々の作品から感じられるエネルギーみたいなものが物凄い。面白いのは流れ作業的に絵を構成し、描いているようで、画中に同じポーズの人物が数組登場したりします。恐らくは何かしらの見本を見ながら描いていたようで*1参考すべきイメージが少なかったのでしょう。物凄く奇妙です。他にも中途半端ないわゆるクロード・ロラン風の風景画*2とかがあったり。
商業ポスターなんかも変な感じでした。チャイナ服を着た微笑を浮かべた女性達がこっちを見つめてきます。一つの作品では、恋人の写真を傍らに手紙を手にする女性。足元には封筒が落ちていて、たった今開封されたことが看取されます。何の広告かと思えば《上海聯海上保険有限会社ポスター》だそうで、恋人に心配かけないように保険に入れ、ということでしょうか。しかし基本的に広告の内容と図象は関係ないことが多かったです。
全体的に物凄い情報量とエネルギーでした。その後、人と待ち合わせていたので、サッと見てパッと帰るはずだったのですが、思わず長居してしまいました。

*1:制作している姿を捉えた絵画では、写真ぽいものを見ながら描いている人物が描かれていました

*2:画面端にルプソワールを配し、前景を暗く、ジグザグと中央から奥へ小道が進む。