ミスト

ミスト [DVD]

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スティーブン・キングの原作をフランク・ダラボン監督が映画化した作品。得体のしれない霧〔mist〕から逃れるべくスーパーマーケットに閉じこもった群衆の心理を、「地元民」/「余所者」、ならびに「知識人」/「労働者」の対立を基に描く。しかし、そうした実際的な対立はしだいに解消され、「宗教」・「法律(経験主義的?)」・「リベラル」といった観念的な対立へとスライドしていく。最終的に、愛とか信仰心を持つものが生き延び、リベラル・マッチョな主人公が絶望へと突き落とされる。いわば、信仰心の欠落、人間の意志の傲慢さを批判的に描いているわけだけれども、同コンビによる「ショーシャンクの空に」とか「グリーン・マイル」と同じく、何か分かり易く説教臭い感じがあまり好きではない。ただ、群衆を客観的に描くのではなく、手持ちカメラとディファレンシャル・フォーカシングを駆使することで観賞者が群衆の一員であるかのように錯覚させるカメラ・ワークは上手く機能していた。それゆえ、キングの作品によくある、人々の感情的で稚拙な様が際立つとともに、それに相まって主人公の(比較的)理性的な振る舞いが際立ち、観賞者は心理的に彼のスタンスにコミットしていく。そうした過程があるからこそ、最終的な絶望がより効果的に描かれることになるのだけれども、だからこそ、正直しんどい。