研究会後記Vol.2

いろいろ返信ありがとうございます。id:BunMayくん、発表原稿はさすがにUPしません。パクッたの何だのといらぬ問題を持ち込みたくはないので。発表に関しては、前半部ではD/Aという区別の曖昧さを技術発展史の観点から詳細に述べられていました。アナログ・カメラといわれている種類のカメラの中にもデジタル技術が取り込まれており、一般的に言われているほどD/Aという区別は確固たるものではない、ということ。また、後半部では、具体的な写真家を例に挙げ(例えば藤原新也ホンマタカシ)彼らがD/Aに対しどのような態度を取っているのかを分析するというものでした。デジタル・カメラで撮影した写真に対してどのような態度を取るのかを、知覚(モニター的知覚)の観点から比較されていました。

結局、発表者からデジタル/アナログの対立の具体的な例示は出ていたのでしょうか?

ということですが、具体的な例示は明確に打ち出してはいなかったように思えます。むしろ、D/Aという単純な対立構造を一端解体するところから始めよう、ということだったと理解しています。
ただ、以前書いたように、そう単純では無いと僕自身は考えています。変わった部分もあるし変わっていない部分もある。おそらく「写真」という枠組みだけで考えることには限界があるでしょう。流通の面から見ると、デジタル音楽(という言葉が適切かどうかは置いといて)もデジタル写真もネット上での流通のあり方は、「私」と接続していますし。FlickrLast.FM。あるいは、Mixiなんかは全部を内包しているし。流通も他の現象があるだろうし、生産、受容のあり方も色々あると思います。
以前のBunMayくんとの議論*1と接続すると、撮影レベルにおいてカメラは自動化の一途を辿っていると思います。コメント欄で「誰」に関しての自動化について話題になっていましたが、ふと思い出しました。

このサイトは、まぁ、ウェブ・アルバムなのですが、写真をUPするとかってに顔を自動認識してくれます。その顔が誰なのかを教えてあげると、それ以降の写真も誰なのかを認識してくれるというもの。自動化といえばまだ不十分で、Flcikrの位置情報サービスの現状と似ていると思います。ただ、マイノリティー・リポートでは虹彩パターンで認識されてしまうシーンがあったけれども、デジカメがWi-Fiでデータベースに接続されるようになったら、それも可能。というか調べてみたらWi-Fiとデジカメの組み合わせは普通にあるみたいね・・・。
id:yasuhamu

「アトラクション」という枠組みが見えなくしてしまったものを見えるようにするための議論だったように思います。

そういう意味で、枠組みのための議論、と。僕の理解が足りないのもあるけれど、結局「見えなくしてしまったもの」が見えてこなかったのです。言説を検証する一番の手は、実際のモノを分析することなのでは?
Sの方さん>
コメントありがとうございます。僕が言いたかったのは、作家論というよりは作品論です。一つの作品を見るときに、「ベッヒャー派」という観点から見ているだけでは見過ごしてしまうもの、それを指摘することは単純に面白いのでは、と思ったのです。枠組みの内部か外部か、というのはそう簡単に線引き出来るはずはありません。ただ、発表を聞いている限りでは、どうしても「ベッヒャー派」を常に参照項にしてドイツ写真が語られているという指摘を踏まえると、そうでは無い視点を、聞く方としては期待してしまうのです。それは聞き手の問題かもしれませんが。
プロパガンダに関しては、特殊な現象とするかどうかではなく、単純に抜け落ちているということが問題だと感じ、質問させていただきました。

戦中のプロパガンダに写真が乱用されたことで、戦後の長い期間に写真というメディアに対する信用が失われていた、といった議論です。

という議論に対する反論として、「戦後間もない写真産業の復興と急速な成長、60年代に頂点に達した写真ジャ-ナリズムの隆盛といった事柄」と言う反論は不十分な気がします。というのも、ドイツにおいて写真は産業の中でも独特な地位を占めているわけで、戦後復興の中では欠かす事の出来ないものだったのではないでしょうか?それに関しては僕も詳しくは知らないので推測の域を出ませんが。また、写真ジャーナリズムの隆盛という点に関しても、そこで問題にしなければならないのは、「戦中ジャーナリズム」と「戦後ジャーナリズム」の差異ではないでしょうか。それは具体的な一時資料収集・分析基づく比較を積み重ねるしかありません。
僕としては連続も断絶もあると思います。自分の研究領域でいうと、やはり土門・名取の世代と、戦後派と言われるVIVOの写真家とではまったく違った写真を作っているわけで、それをプロパガンダとの距離の問題として考えることも出来ると思います。
戦争における写真の役割と、戦後におけるリアクションは僕も関心を持っている問題です。何か新しい情報があればぜひ教えていただけると幸いです。

*1:http://d.hatena.ne.jp/BunMay/20071129#p1