唐ゼミ 鉄仮面

先週の土曜日、旧立誠小学校で行われた唐ゼミ*1公演「鉄仮面」を見てきた。運動場に作られたテント小屋。観劇はずいぶんと久しぶり。最後に見たのは劇団四季の「アイーダ」か。ニットキャップの新人公演も宣伝美術の仕事(ノーギャラ)を請け負いながらも本番は見にいけなかった。学部時代は同志社小劇場を頻繁に見に行っていたので、こういう小さい劇場でぎゅうぎゅうの状態で見るのは本当に数年ぶり。
戯曲自体はどうだったかというと、役者のやり取りから生み出されるドライブ感が心地よく、容易に舞台空間に引き込まれていくのだけれど、興味深いのは、主役二人が感情的な引き込みをどことなく拒んでいるように思わせるという点。主人公のスイ子は物凄く気分屋で、もう一人の主人公の畳屋もかつて夢見たヒーローに今も夢を見ていて、夢から覚めろと親父に殴られても、どこか心もとないまま。戯曲そのものはテンポ良く進行していき、身体的には乗っていくのだけれど、一方で、なかなか感情移入させてくれない。この微妙な「揺れ」が乞食達や紙芝居屋といった強烈な人物達によって全体のバランスの中で絶妙にコントロールされていく。なかでも「伯父さん」の存在感がなんとも言えず素晴らしくて、第一幕の最後に登場したその瞬間、舞台の雰囲気がスッと変わるのがわかった。
ところで、このテント小屋は、小さな舞台空間に加えて花道が設けられていて、舞台空間と観客席とが断絶されていない。ただ横に広がった舞台(しかも低い)を「横」に使うだけでなく、花道を通じて「縦」に舞台空間を使うことが出来る。圧巻なのは第二幕の最後、「鉄火面」最後のシーン。これまで横軸の舞台を中心にして演じられてきた戯曲が、最後のシーンでは花道と、開いたテントの向こうへと続く階段によって形作られる縦の軸が一気に強調されていく。この横から縦への展開と同調するように、スイ子と畳屋の人物像もまた大きく展開していく。彼ら自身の縦への突き抜けていく動きと相まって、見ていて非常にエキサイティングなエンディングだった。
観劇後は役者の方々関係者と一緒にテント内で飲む。実際に役者さんと話すのも面白かったです。これを期に小劇場もちょこちょこまた見に行こうかな。時間があれば・・・。

*1:[http://redg.info/~karazemi/:title]