プラスティック

先日、青田真也氏の作品を続けざまに見たこと、きっちり感想を伝えられなかったこともあってここに感想を。これまでの氏の作品の経歴を確認したわけでもなく、ただ今回、二会場での展示を拝見させてもらっただけなので、的外れかもしれないのはご了承を。
氏の作品の中核をなすのが、プラスチック製品の表皮をヤスリのようなものでけずり、質感を変容させてしまうというもの。東松照明がプラスティックというシリーズを作成していることもあり、以前少しだけプラスティックについて考えていた時期がある。
プラスティックは容易に変容し、複製ができ、軽い。汎用性があり、その軽薄な質感はポップアートに頻繁に用いられた理由でもある。その軽薄さは無味乾燥とした物質としての特性のなさ、味がしない、匂わない、感触が均質、軽さ、に由来する。無個性なプラスティックの表面をヤスリで削ることによって、物質のもつ無個性な表面が、突如違和感のあるものに変容する。展示そのものには触れることが出来なくて、正直何がなんだかわからなかった。けれども、フライヤーの重しとして使われていた作品の一つを触れると、硬く均質なはずのプラスティックの表面が柔らかくなっていて、その異様な表面が本当に気持ち悪かった。この違和感こそが青田氏の作品の核となるのでは、と思う。もちろん作家自身がどう考えているかは別問題として、ですが。

プラスチックの文化史―可塑性物質の神話学

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