アーカイブ/ドキュメント

The Archive (Whitechapel: Documents of Contemporary Art)

The Archive (Whitechapel: Documents of Contemporary Art)


この本に収録されている論文、A Language to Come: Japanese Photography After the Eventをやっと読み始める。痕跡(trace)と歴史記述の問題から、近代的な歴史記述が過度に依存する写真へと展開し、そこから原爆、敗戦、占領という地点から日本写真史が語られる。土門、東松からProvokeまで。タイトルは中平卓馬の『来るべき言葉のために』から。少し丁寧に読んでみよう。
この論文が導入部で述べるのは、痕跡(trace)は確かにあるにも関わらず、被爆という起源が消滅してしまっているというパラドックスである。そのパラドックスは、痕跡が起源を指し示すと考えることによって解消できる。そしてこの構造をより客観性の強いメディアとして達成してくれるのが写真なのである。けれどもこの構造は、集合的記憶において非常に利用されやすい。原爆ドームがその最たる例である。原爆ドームは常に痕跡を刻み込まれた廃墟であり続けなければならず、それゆえ廃墟であり続けるように「補修」される。さて、そのような状況で原爆=写真家はどのようにアプローチしたのだろうか、と話が続いていく。