Essential Painting

国立国際美術館で明日から開催の展覧会、エッセンシャル・ペインティングの内覧会、レセプションにお邪魔してきた。90年代以降、「死んだ」メディアといわれてきた絵画作品が、欧米圏を中心とする画家達によって注目を集めてきた。今回の展覧会では、90年代から現在にいたるまで活躍する作家たち十三人をピックアップしていた。展示は、各作家の個展の、あるいは即売会のブースの集合体と言った様を成しており、各作家が各自のスペースを与えられ作品が展示されていた。出展作家は次の通り。

  • マンマ・アンダーソン(スウェーデン 1962-)
  • セシリー・ブラウン(イギリス 1969-)
  • ジョン・カリン(アメリカ 1962-)
  • ピーター・ドイグ(イギリス 1959-)
  • マルレーネ・デュマス(オランダ 1953-)
  • ベルナール・フリズ(フランス 1954-)
  • アレックス・カッツ(アメリカ 1927-)
  • ミッシェル・マジュリュス(ドイツ 1967-2002)
  • ローラ・オーエンズ(アメリカ 1970-)
  • エリザベス・ペイトン(アメリカ 1965-)
  • ネオ・ラオホ(ドイツ 1960-)
  • ヴィルヘルム・サスナル(ポーランド 1972-)
  • リュック・タイマンス(ベルギー 1958-)

展覧会を通覧して感じたことの一つに、写真やアニメ、過去の美術といった既存のイメージを前提にした作品が少なくない点がある。いわゆるサブカルチャーの引用は、アカデミズムに対抗する態度の表明であったわけだが、本展で出展された作品を通覧する限り、そのような意識は極めて希薄のように思われる。むしろハイアートとサブカルチャーといった二項対立的な図式とは無関係な地点から作品を制作しているように見える。また、画面表面はフラットで、筆触は極力目立たせないようにしているものが多かったように思える。展覧会会場を見て回っていると、ある既視感に襲われた。それは日本での2000年前後における同様の絵画を巡る動向だった。奈良美智、杉戸洋、落合多武、村瀬恭子といった日本の画家の名前がちらついた。おそらく、今回出展された十三人の画家と日本人のニューポップと呼ばれた彼らとは同じ地平に立っているのかもしれない。それをグローバル化時代の絵画と呼んでも良いだろう。そう考えると、村上隆スーパーフラットというコンセプトを輸出しようとしたことと連なるかもしれない。もう一度ユリイカのバックナンバー「
村上隆vs奈良美智 -
「ユリイカ」「現代思想」の雑誌発行、人文諸科学の専門書の出版社「青土社」
」でも引っ張り出してこようかな。
今回の展覧会は、現在の画家の作品を実際に見る良い機会であるが、もう一方で写真やコンセプチュアル・アートによって「死んだ」はずの絵画が現在どのようなあり方で「生きて」いるのかを考える機会でもある。
また、同時開催されている小川真治展や、コレクション展――日本の現代写真――も見ごたえがある。特に、エッセンシャル・ペインティングという現在進行形の絵画作品と現在進行形の写真作品を同時に見ることが出来るのは、絵画、写真を考える上で絶好の機会と言える。今回はジョン・カリンをはじめ、ローラ・オーエンズの作品など、まだ搬入されていない作品がいくつかあったようなので、また改めて足を運びたい。

エッセンシャル・ペインティング

【会期】 2006年10月3日(火)─ 12月24日(日)
【開館時間】 午前10時〜午後5時、金曜日は午後7時(入館は閉館の30分前まで)
【休館日】 毎週月曜日 (ただし、10月9日[月・祝]は開館、10月10日[火]は休館)

小川真治展

【会期】 2006年9月30日(土)─ 12月24日(日)
【開館時間】 午前10時〜午後5時、金曜日は午後7時(入館は閉館の30分前まで)
【休館日】毎週月曜日(ただし、10月9日[月・祝]は開館、10月10日[火]休館)