最近見た映画


手持ちカメラ、自然照明のみで撮影された小品映画。バイトの後輩から借りたままずっと見れていなかった。監督・脚本はロネ・シェルフィグ。舞台はデンマークの街、コペンハーゲン。登場人物たちは皆イタリアに憧れを抱いている。何故だろうと思ってみていたのだけれども北欧という寒い地域ゆえに、太陽、緑、明るさといったイタリア性に魅了されるのだろう。登場人物たちは様々な事情を抱えイタリア語の講座へ通い、イタリア語を学ぶ。その過程で様々な出来事が起こり、最終的に旅行先のイタリアの地でそれぞれの幸せを手に入れるというシンプルだけれども気の利いたストーリー。
誰も知らない [DVD]

誰も知らない [DVD]


ずっと見よう見ようとして機会を逃していた。是枝監督はこれまでにも『ディスタンス』『ワンダフルライフ』(『幻の光』は未見)といった作品で、フィクションともノンフィクションとも言いがたい作品を撮影している。対象となる出来事について出演者個人の解釈や記憶を語らせたりしている。リアリズム以降のドキュメンタリー映画とも言うべきか。実際の事件の顛末はココ→【family】(巣鴨子供置き去り事件)で知ることが出来るが、この映画はその事実をありのままに伝達するわけでも、何かを告発するわけでもなく、何かしらの結論めいたことを説くわけでもない。子供たちは台詞は少なく演技も拙い。特にストーリーに関係のないショットも多い。計算された「自然体」は「誰も知らな」かった出来事をただ提示する。知ってしまった観賞者は、それぞれの方法でそれぞれの立場からこの出来事と向かいあう。
ロング・エンゲージメント [DVD]

ロング・エンゲージメント [DVD]


オドレイ・トトゥジャン=ピエール・ジュネ監督という「アメリ」コンビによる作品。時代は第1次世界大戦。軍法会議で死刑を宣告された5人の兵士は、敵との中間地帯に放り出される。マチルダ(オドレイ)は、恋人でありその誤認の中の一人でもあるマネクの消息を追う。ラブストーリーを軸に映画は「アメリ」風の御伽噺的な様相を随所にちりばめながら、その時前線で何がおこったのかという謎を解き明かしていく。単なるラブストーリーではなく、その背後には、戦争と如何に関っていくのか、という大きなテーマが潜む。恋人の捜査の過程で戦争を知らない田舎町のマチルダは戦争という惨事と向き合っていく。最終的にマチルダは幸せを手にするだけれども、その幸せは「忘却」に基づいている。その意味ではラストシーンは凄く残酷であり、そしてそれゆえあまりにも綺麗だ。
抱擁 [DVD]

抱擁 [DVD]


母親お勧めの映画。ヴィクトリア朝時代の詩人、ランドルフ・ヘンリー・アッシュと詩人クリスタベル・ラモット(バイセクシャル)の恋愛を、英文学研究員でアッシュの研究に携わるローランド・ミッチェルとジェンダー理論を専門としラモットの研究家のモード・ベイリーとが調査する。二つの物語はパラレルに進行し、そのつなぎ方は見事。あまりにもロマンティックな物語。穿った見方をすれば美術史研究のロマンティシズムとも取れる。現代/過去、男性性/女性性、情熱/理性といった対立が様々に入り混じっていく物語の進行は見事。ブッカー賞を受賞した原作を読んでみたい。ラファエル前派風の衣装、交霊術、遺髪と写真、時代的社会的な背景や小道具も興味深い。また、当時としては先鋭的であっただろう同性愛、あるいは現代の「あるべき女性像」といったジェンダー論的な視点もテーマとなっている。台詞一つ一つにも凄く気を使っている。