ぶらり写真の旅:金沢初秋編

日帰りですが、金沢にいってきました。目当ては金沢21世紀美術館で開催中のゲルハルト・リヒターの回顧展。初の金沢21世紀美術館
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リヒターは現代絵画の巨匠と呼べれたりしている東ドイツ出身の作家。彼の作品は、写真を元にその上に絵の具で描いた絵画「フォト・ペインティング」、「カラー・チャート」というまるで色見本のようなミニマリスティックな作品、伝統的な絵画主題である風景画や静物画、大胆なモノクロームの「グレイ・ペインティング」、ガラスを用いた作品、鮮やかな色彩を多層的に重ね削り取った「アブストラクト・ペインティング」等、極めて多様な様相を見せる。
様々なところで語られているが、彼の絵画は、「絵画におけるモダニズム」から出発している。つまり写真的リアリズム以降、絵画には何が出来るのか、という問いから出発し、時代遅れという声もあるかもしれないが今もそこにこだわっているいえるだろう。そのことはまた、逆に「写真のモダニズム」を照射してくれる。つまり、ストレート写真という神話である。写真は絵画とはことなり「ありのままの現実」を暴露するという神話。リヒターにとって写真とはどういったものなのか、と考えると色々思考が広がっていって面白い。
また、彼の作品は展示・構成によって随分と印象が変わるだろうな、という感想を持った。今回の展示では、彼の母親であるエマが、ヌードで階段を降りるフォト・ペインティングを、反射率の高いガラスの対面に配している。映像である写真の上に絵の具を載せることでそのインターフェース、スクリーンをあらわにし、それをさらに映像としてガラスに反射させるという複雑な構造をとっている。あるいはまた、階段を降りる裸婦、ガラスというキーワードからは当然のことながらデュシャンを連想する。図録で清水先生が書いているように、デュシャンとリヒターは極めて強く結びついていることが伺える。このように、並べ方次第でリヒターの作品は様々様相を見せ始める。
そういう意味では、この金沢21世紀美術館で展示されたことは意義深い。美術館そのものがガラス張りであるし、また、空を描いたフォト・ペインティングと、21世紀美術館の常設展示、タレルの部屋における、切り取られた(天井に空いた穴から見える)本物の空と比較してみたりと、連鎖的に作品が繋がっていく。この展覧会は本当に示唆にとんだ展覧会と言えるだろう。

GERHARD RICHTER  ゲルハルト・リヒター (DVD付)

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図録購入。
リヒターの作品に反射率の高いガラスを五枚重ねた作品がある。それぞれのガラスに見るもの、つまり「私」の象が写り、奇妙な揺らぎを見せる。それをガラス張りの美術館で実践してみた。
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